当社が実際にやっている決算対策 全公開 — マイクロ法人1社の実例まとめ
当社が実際にやっている決算対策 全公開 — マイクロ法人1社の実例まとめ
このサイトは、株式会社87Technologyが実際に実行した決算対策だけを書いています。カタログのように制度を並べる記事ではなく、自社で使ってみて何が効いたか、何をあえて見送ったかの記録です。
この記事は、その全体像を1枚にまとめたものです。当社が今どんな対策を、どんな考え方で組み合わせているか。個々の制度の細かい要件や当社の運用の詳細は各記事に譲り、ここでは「地図」として全体を見渡せるようにしました。同じマイクロ法人・小規模法人の経営者が、自社に何が当てはまりそうかを当たりづける入り口として読んでいただければと思います。
当社の前提 — マイクロ法人1社の規模感
対策の話に入る前に、当社の前提を共有しておきます。効く対策は会社の規模や事業構造で変わるため、ここがずれると「当社ではこうだった」がそのまま参考にならないためです。
当社(株式会社87Technology)は、ソフトウェア開発を本業に、不動産(区分マンションの賃貸)とこのメディアを運営する小規模な法人です。従業員を多数抱える体制ではなく、代表の稼働が売上の中心にあります。売上は年によって波があり、利益が大きく出る期もあれば、代表が動けず落ち込む期もあります。
この規模感には、決算対策の観点で2つの特徴があります。1つは、代表の働き方しだいで利益の出方をある程度コントロールできること。もう1つは、大企業向けの派手な仕組みより、少額でも毎期積み重ねられる対策のほうが体力に合っていることです。以下で紹介する当社の対策は、すべてこの前提の上に成り立っています。
繰延型 — 経営セーフティ共済
決算対策は、効き方で大きく3つのタイプに分けられます。1つ目が、今期の税金を将来へ先送りする繰延型です。
繰延型の代表が経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)です。掛金は月額20万円まで、総額800万円まで積み立てられ、支払った期に全額を損金にできます(租税特別措置法第66条の11)。ただし解約して受け取る解約手当金は、その期の益金に算入されます。掛金を払った期に減った利益が、解約した期に戻ってくる構造です。つまりこれは税金が消える「節税」ではなく、支払時期を後ろへずらす「課税繰延」にあたります。
繰延型は、戻ってくる益金を何にぶつけるかという出口を設計して初めて意味を持ちます。当社は経営セーフティ共済を導入済みで、上限の800万円まで積み立てを続ける方針です。出口として想定しているのは、役員退職金でも赤字期でもなく、代表がまとまった長期休暇を取る期です。代表の稼働が売上の中心なので、長期の休みを取ればその期の利益は自然に落ちます。そこへ解約手当金の益金をぶつければ、下がった利益と相殺して繰延を回収できる、という考え方です。
制度の要件、40ヶ月ルール、令和6年10月以後の再加入制限、そして当社が長期休暇を出口に選んだ理由は、別記事で詳しく整理しています。
関連記事: 経営セーフティ共済の使い方と出口戦略 — 当社の運用方針つき
恒久型 — 出張日当・少額減価償却資産
2つ目のタイプが、支払った税金が将来戻ってこない恒久型です。繰延と違い、こちらは税負担そのものが減ります。当社が使っているのは2つです。
1つ目は出張日当です。旅費規程をあらかじめ整備し、その規程にもとづいて出張時に日当を支給します。通常必要と認められる範囲の日当は、受け取る役員・従業員側では所得税法第9条第1項第4号により非課税、支払う会社側では損金になり、消費税でも課税仕入れとして扱えます。受け取った本人に所得税がかからず、会社の利益も圧縮される点で、繰延とは効き方が異なります。当社も旅費規程を整備した上で運用しています(金額は非公開ですが、規程の作り方と否認されない相場観は別記事で扱っています)。
関連記事: 旅費規程と出張日当の作り方 — 非課税で受け取れて会社の損金になる仕組み
2つ目は少額減価償却資産の特例です。青色申告の中小企業者等が取得価額30万円未満の資産を買った場合(令和8年4月1日以後に取得した資産は40万円未満)、その全額をその期の損金にできる制度で、年間の合計は300万円までが上限です(租税特別措置法第67条の5、適用期限は令和11年3月31日まで)。本来は耐用年数にわたって少しずつ償却する資産を、一度に損金化できます。当社は業務用のiPhoneの購入でこの特例を使いました。金額としては大きくありませんが、決算直前でも間に合う数少ない対策で、こうした積み重ねが恒久型の基本になります。
関連記事: 少額減価償却資産の特例 完全ガイド — 10万円・20万円・30万円→40万円の使い分け
損金の前倒し型 — マイニングマシン・区分マンションの減価償却
3つ目のタイプが、資産の取得を通じて損金を前倒しで計上する形です。将来の減価償却費を今期に寄せたり、少額資産の枠を使って初年度に落としたりして、利益が出た期の課税所得を圧縮します。当社はここで2つの実例を持っています。
1つ目はマイニングマシン(Web3 Maker)です。2023年に税込99,000円のマシンを10台、合計99万円分を法人で購入しました。1台あたり10万円未満のため、少額の減価償却資産として初年度に全額を損金算入しています。その後3年のライセンス期間を運用し、マイニング収益はペイアウト時点で総額131万円に達しました。取得時に損金を作りつつ、運用で回収まで見届けた実例です。満期は終了しており、再購入は利益が大きく出た黒字期に改めて検討する方針です。
関連記事: 【実録】マイニングマシン節税 — 99万円分を3年運用しきった全記録
2つ目が区分マンションの減価償却です。当社は区分マンションを複数保有し、賃貸に出しています。不動産のうち土地は減価償却の対象になりませんが、建物部分は取得価額を耐用年数にわたって償却するため、毎期一定額が損金になります。住宅用の鉄筋コンクリート造の建物であれば法定耐用年数は47年ですが、中古で取得した場合は経過年数に応じて耐用年数を短く見積もる簡便法が使えます。耐用年数が短いほど1年あたりの償却費は大きくなり、その分だけ毎期の損金が増えます。なお平成10年4月1日以後に取得した建物の償却方法は定額法に限られ、定率法のように初年度へ大きく寄せることはできません。
当社の場合、この建物の減価償却費が毎期の損金として効いています。加えて、利益が大きく出た期に物件を追加取得して、その年の利益を圧縮したこともあります。物件を持てば管理の手間も資金拘束も生じるため、税金だけを目的に買うものではありませんが、事業として不動産を持つことが結果的に決算対策にもなっている、という位置づけです。金額の規模はここでは触れませんが、当社にとって減価償却は毎期の土台になる損金だと考えています。
あえて使わなかったもの — 役員社宅
ここまで当社が使っている対策を並べてきましたが、効果があるとされていても、あえて使っていない対策もあります。役員社宅です。
役員社宅は、法人が借りた住宅を役員へ貸し、役員から賃貸料相当額を受け取ることで、会社が負担した家賃と受取家賃の差額を損金にできる仕組みです。恒久型として効果が大きいとされ、決算対策の定番として紹介されることも多い制度です。
しかし当社では導入していません。代表の自宅が持ち家であり、法人が住宅を借り上げて役員へ貸すという、このスキームが前提とする形に当てはまらないためです。制度そのものは有効でも、自社の状況で条件を満たせなければ効果は出ません。効果の大きさだけで飛びつかず、自社の前提に合うかどうかで採否を決める。この取捨選択も決算対策の一部だと考えています。世の中で「使える」とされる対策が、自社でも使えるとは限らないという一例です。
当社の決算対策の考え方
当社の対策を一覧にすると、繰延型(経営セーフティ共済)、恒久型(出張日当・少額減価償却資産)、前倒し型(マイニングマシン・不動産の減価償却)を組み合わせている、という形になります。
貫いているのは、単発の派手な商品に頼らず、時期を外さない積み重ねで対応するという方針です。決算直前に大きな買い物をして一度に利益を消すやり方は、資金を大きく動かす割に翌期以降へ効果が続きません。それよりも、恒久型で毎期の税負担を少しずつ軽くし、減価償却で土台の損金を確保し、利益が大きく出た期にだけ繰延や資産取得を上乗せする。この組み合わせのほうが、当社の規模には合っていると判断しています。
そして、どの対策も動き出す時期で打てる手が変わります。経営セーフティ共済の前納も、少額資産の取得も、決算日を過ぎてからでは間に合いません。当社が対策を「利益が出そうだと見えた時点」から逆算で動かしているのは、そのためです。時期別に何がいつまで間に合うかは、別記事で整理しています。
関連記事: 決算対策はいつまでに何をやるか — 決算月からの逆算カレンダー
まとめ — 各対策の入り口
当社が実際に使っている決算対策と、その位置づけを最後に一覧で再掲します。それぞれの詳細は、リンク先の記事にまとめています。
- 繰延型: 経営セーフティ共済。上限800万円まで積立、出口は代表の長期休暇による減益期 → 経営セーフティ共済の使い方と出口戦略
- 恒久型: 出張日当(旅費規程を整備して運用) → 旅費規程と出張日当の作り方
- 恒久型: 少額減価償却資産の特例(iPhoneの購入で使用) → 少額減価償却資産の特例 完全ガイド
- 前倒し型: マイニングマシン(99万円分を初年度全額損金、3年で総額131万円回収) → 【実録】マイニングマシン節税
- 前倒し型: 区分マンションの減価償却(建物部分が毎期の損金。本記事内で解説)
- あえて使わない: 役員社宅(代表が持ち家のため条件に合わず。本記事内で解説)
決算対策そのものの土台となる「節税と課税繰延の違い」を先に押さえておくと、各記事の判断基準がつかみやすくなります(関連記事: 「節税」と「課税繰延」の違い — 決算対策商品に騙されないための基礎)。着手の時期を決算月から逆算したい場合は逆算カレンダーを、いつ何をやるかの全体設計としてあわせてご覧ください。
株式会社87Technologyは、本記事で紹介する決算対策を実際に自社で実行し、その記録を公開しています。
本記事は一般的な税制の解説および当社自身の事例の紹介であり、個別の税務判断を行うものではありません。税制は改正される可能性があります。実際の適用にあたっては、顧問税理士等の専門家にご確認ください。