実録

マイニング報酬の仕訳 当社がfreeeで実際にした処理

株式会社87Technologyは、決算対策として購入したマイニングマシンの報酬を、会計freeeでは「国内の暗号資産取引所へ送金した時点」で売上高として計上していました。法人の暗号資産の原則は、マイニングで取得した時点の時価で益金に算入し、期末に時価評価するというものです。当社の処理は、この原則とは収益を認識するタイミングが異なります。

先にお断りしておくと、この記事は当社が実際に行った処理の記録であり、この処理を推奨するものではありません。原則の根拠は国税庁の暗号資産に関するFAQ(取得時点の計上)と法人税法61条(期末時価評価)で、制度そのものは法人の暗号資産 期末時価評価と改正動向を整理するで整理済みです。制度の再解説ではなく、原則と当社の実務がどこで違っていたかを仕訳の形で開示します。

マイニング報酬の経理処理には原則がある

国税庁の暗号資産に関するFAQでは、マイニングにより暗号資産を取得した場合、取得した時点の時価をもとに所得金額を計算するとされています。法人でも同じ考え方で、報酬としてコインを受け取った時点が収益を認識する起点になります。売って日本円に換えた時点ではありません。

これに加えて、法人には期末時価評価があります。法人税法61条2項により、事業年度末に保有している市場暗号資産は決算日の時価で評価し、同条3項により、帳簿価額との差額が益金または損金になります。売却していなくても含み益が課税所得に乗ります。判定要件や例外は前掲の制度解説記事で扱っています。

原則は「取得した時点で収益を立てる」と「期末に時価で洗い替える」の2つです。当社の処理は、このうち前者のタイミングが異なっていました。

当社がfreeeで実際にした仕訳 4つの場面で分けて計上

当社は会計freeeで記帳しています。マイニング報酬まわりで使っていた勘定科目は、売上高と為替差損益の2つでした。受け取った報酬の総額や年別・コイン別の内訳は実録記事にあるため、ここでは処理そのものを扱います。

マイニング取得時点は仕訳していない

マイニング報酬は、まずMetaMaskというウォレットに入ってきます。この着金時点で、当社は仕訳を一切していません。仮仕訳も備忘記録も残していません。

理由は件数です。報酬はまとまった金額が一度に入るのではなく、コインが少額ずつ繰り返し積み上がっていきます。当社はETH・BNB・SISCの3種類を受け取っていたため、着金のたびに時価を調べて起票していては作業量が膨らみます。

原則にあてはめれば、収益を認識すべきなのはこの時点です。当社はそれをしていませんでした。

取引所へ送金した時点で時価を売上高計上

当社が最初に仕訳を起こしていたのは、ウォレットのコインを国内の暗号資産取引所へ送金した時点です。その時点の時価で売上高を計上していました。

マイニング報酬は売上として処理する必要がある、という認識は当社にもありました。計上漏れを避けるため、決算日を迎える前にウォレットの残高を取引所へ送金する運用ルールを置いていました。報酬をウォレットに置いたまま年をまたいだことはありません。

この時点で貸方に立つのが売上高です。借方側は、まだ日本円になっていないコインを資産として持っている状態です。原則の立場では、収益はこの送金時点より前、取得した時点ですでに計上されているはずです。

円転した時点は為替差損益で差額計上

取引所へ送ったコインを日本円に換えた時点では、別の仕訳を立てていました。送金した時点の時価と、実際に円になった金額との差額です。当社はこれを為替差損益として計上し、売上高には混ぜていません。

なお、暗号資産は外貨そのものではなく、法人税法上も61条で別に定められた資産です。科目名として為替差損益が適切かどうかは別の論点ですが、当社は価格変動から生じた差額を売上高と切り分けるための科目としてこの名前を使っていました。

決算をまたいだ場合は期末に為替差損益で時価評価

取引所へ送ったあと、日本円に換えないまま決算日を迎えたコインもありました。当社は期末時点で時価評価をしています。送金した時点の時価と決算日時点の時価との差額を、やはり為替差損益として計上していました。売却していない含み損益を期末に計上する点では、法人税法61条2項が求める期末時価評価と同じです。

当社が期末に保有していた暗号資産は、ウォレットに置いたままのコインではありません。取引所への送金と売上高の計上は済んでいて、あとは日本円に換えるだけという状態のコインです。制度解説記事に「保有したまま期末を迎えた事業年度があります」と書いたのは、この取引所内・円転前の状態を指しています。

場面 当社の処理 使っていた科目
ウォレットに報酬が入った時 仕訳なし なし
取引所へ送金した時 その時点の時価で収益計上 売上高
取引所で日本円に換えた時 送金時の時価との差額を計上 為替差損益
円転前のコインを持ったまま期末を迎えた時 送金時の時価との差額を時価評価で計上 為替差損益

表の「為替差損益」は当社が使っていた科目名であり、一般的な会計処理としての標準ではありません。

原則と当社の処理の違い

項目 原則 当社の処理
収益を認識する時点 マイニングで取得した時点 取引所へ送金した時点
収益として計上する金額 取得した時点の時価 送金した時点の時価
その後の値動きの扱い 期末時価評価と譲渡損益で反映 為替差損益として計上
期末に保有していた場合 時価評価の対象 時価評価を実施(送金時点との差額)

表中の「為替差損益として計上」も同じ科目名の話で、一般的な会計処理としての標準を示すものではありません。

異なるのは収益を認識するタイミングであり、期末に時価で評価する部分は原則どおりに行っていました。取得時点の計上だけを省き、そこから先は一貫したロジックで運用していた形です。

理屈のうえで動くのは、取得した時点から送金した時点までの間に生じた値動きの扱いです。原則どおりならこの区間の値動きは期末評価や譲渡損益として扱われますが、当社の処理では売上高の金額そのものに含まれます。

取得した事業年度と送金した事業年度が分かれれば、収益が乗る年度そのものがずれます。当社は決算日前に送金する運用だったため年度が分かれることはありませんでしたが、原則どおりの処理と結果が一致することを検証したわけではありません。取得から送金までの期間が長いほど、また金額が大きいほど、原則との差は開きます。

この処理になった背景

明確な方針として決めたというより、実務の流れの中で自然にそうなっていた、というのが正直なところです。

出発点は件数です。着金のたびに時価を調べて起票する作業は、他の経理業務と並行して回すには手間がかかります。当社が着金時点で記帳しなかったのは、意識して省略したというより、日々の記帳の対象として乗ってこなかったからです。

一方で、マイニング報酬を収益に立てないまま放置してはいけない、という認識ははっきりありました。だからこそ決算日を迎える前に取引所へ送金する運用を置いていました。着金の都度は記帳しないが、決算までには収益として計上する。この2つを両立させた結果が、送金時点を区切りにする処理でした。ただし、収益を認識する時点が原則と異なっている事実は変わりません。

なお、これは当社1社の経緯です。同じ処理をしている法人がどのくらいあるのかを当社は把握していませんし、実務としてよくある形なのかどうかも、この記事では判断しません。

この記事を読んでいる法人が確認したいこと

マイニング報酬を受け取っている法人にとって、確認しておく価値がありそうな論点を挙げます。当社の処理をなぞることを勧めるものではなく、自社の処理が今どうなっているかを把握するための材料です。

これらをどう判断するかは、取引の規模や金額の重要性、保有の方針によって変わります。自社の処理が原則と異なっているかもしれないと感じた場合は、顧問税理士に確認しておくのが安全です。

まとめ

要点を再掲します。

自社の場合にどの処理が適切かは、取引の重要性や保有の方針、外部監査の有無によって変わります。原則と異なる処理になっている可能性に気づいた場合は、顧問税理士に確認することを勧めます。

購入側の処理と3年間の収益実績は実録記事に、法人の暗号資産の制度そのものは法人の暗号資産 期末時価評価と改正動向を整理するにまとめています。買った機械の損金算入、持っている暗号資産の期末評価、受け取った報酬の収益計上は、それぞれ別の論点です。