マイニングマシン節税をやめておくべき会社 — 向き不向きの見分け方

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「マイニングマシン節税はもう使えない」「Web3 Makerは自社に向かないのではないか」。決算対策として暗号資産マイニングマシンの購入を検討する段階になると、こうした逆向きの情報を探す経営者は少なくありません。
当社(株式会社87Technology)は2023年に99万円分のマイニングマシン(Web3 Maker)を購入し、3年のライセンス期間を運用しきりました。そのうえで、利益が出なかった翌期には再購入していません。この記事は、その実績と当社自身の判断をもとに、商品の欠陥ではなく需要側の適合という観点で、マイニングマシン節税が向かない会社の条件を整理したものです。
「マイニング節税はもう終わった」という誤解を先に整理する
「デメリット」で調べると、「令和5年度の税制改正でマイニングマシン節税は終わった」という情報をよく見かけます。ここには区別が必要です。
制限が加わったのは、マイニング機器を外部に預けて運用委託するタイプに、中小企業経営強化税制の即時償却を適用するスキームです。一方、当社が使ったのは、1台10万円未満の機器を自社で保有・稼働させ、少額減価償却資産として初年度に全額損金算入する建て付けで、別の制度に乗っています。この少額資産の枠にも令和4年度改正で貸付け用途の除外が入りましたが、自社で保有し自社で稼働させる形はその除外に当たりません。「もう終わった」で語られる話とは、使う枠がそもそも別物です。
どの改正で何が対象になったのかは、マイニングマシン節税はなぜまだ使えるのかで整理しています。制度そのものは今も成立しています。問題は、それが自社の状況に合うかどうかです。
利益が出ていない会社は買う意味がない
決算対策商品は、出た利益を圧縮するために買うものです。10万円未満の一括損金で今期の課税所得を下げられるのがこの商品の効果ですが、下げるべき所得がなければ効果は生まれません。損金を作ること自体が目的になると、圧縮する利益がないのに現金だけが出ていきます。
ここで分けて考えたいのが、「たまたま今期だけ薄利」なのか「恒常的に利益が出ていない」のかです。前者で翌期以降に黒字が見込めるなら、利益が出た期に検討すればいい話です。後者なら、決算対策より先に手をつけるべきことがあります。
損金を作れば税金が消えるわけではない、という原則は決算対策全般に共通します。この考え方は「節税」と「課税繰延」の違いで整理しています。
暗号資産の価格変動を受け入れられない会社
受け取るマイニング報酬はコインなので、日本円換算額は受け取り時点のコイン価格で決まり、同じ枚数でも時期によって円換算は大きく変わります。
当社が3年間で実際に受け取った額を年別に並べると、この振れ幅がはっきり出ます。
| 年 | ペイアウト額(円換算) |
|---|---|
| 2023年 | 325,138円 |
| 2024年 | 299,569円 |
| 2025年 | 591,427円 |
| 2026年 | 95,039円 |
| 合計 | 1,311,173円 |
金額はいずれも各ペイアウト時点の円換算です。最も多い2025年(59.1万円)と最も少ない2026年(9.5万円)では約6.2倍の開きがあります。2026年は稼働最終年で受け取り回数自体が少なかった事情もありますが、フルに動いていた2024年と2025年だけを比べても、30.0万円と59.1万円で約2倍の差です。2025年が伸びたのは、イーサリアム(ETH)の価格が上がった局面でのペイアウトが重なったためで、狙って出せた数字ではありません。
振れるのは年だけではありません。当社はマシン1台ごとに受取コインを選ぶ方式で、ETH4台・BNB5台・SISC1台という構成でした。台数はBNBの方が多いのに、円換算の受取額はETHがBNBの3倍以上です。年別・コイン別の詳しい内訳は3年間の全記録にまとめています。
受取額がいくらになるかを事前に読めないと困る会社には、この不確実性は向きません。
5年かけて回収する設計が資金計画に合わない会社
この商品は、損金化とリターンのタイミングがずれています。99万円分を買えば、その全額を購入した期に損金へ算入できます。一方、見返りのマイニング報酬は、稼働期間を通じて少しずつ入ってきます。当社の3年稼働型では37回のペイアウトに分かれ、約2年10ヶ月かけて積み上がりました。現行モデルは稼働期間が5年に延びているため、受け取りはさらに長く分散します。
つまりこれは、今すぐ手元の現金を増やす対策ではありません。今期の税負担は軽くなっても、見合う報酬が入るのは稼働期間を通じて少しずつです。利益圧縮に加えて短期の資金繰り改善も同時に求めているなら、この時間差は設計としてかみ合いません。
現行5年型で受け取りがどう分散するかの見立ては、3年間の収益総括と現行モデルの試算で扱っています。
円転やウォレット管理の実務を回せない会社
受け取った報酬はコインなので、日本円にするには自社で売却の実務を回す必要があります。ここが想像より手間になる場合があります。
法人でやるなら、法人名義の暗号資産取引所の口座が要ります。取引所によっては法人口座に対応していないため、先に出口を確保しておく順序になります。当社はBitPointとCoincheckで法人口座を開設しました。
コインによっては国内取引所での取り扱いが限られます。当社の場合、ETHはそのまま送金できましたが、BNBとSISCはMetaMaskのウォレット上でETHに交換(ブリッジ)してから送金する一手間が入りました。暗号資産のウォレット操作に馴染みがないと、この工程が思ったより負担になります。
経理や実務のリソースが薄い小規模な法人ほど、この負荷は効いてきます。手間を避けたいなら、受取コインを取り扱いの広いBTCやETHに寄せる手もあります。当社の購入時はBTCを選べませんでしたが、現行モデルでは選択肢に入っています。
税制改正リスクを許容できない会社
マイニング設備をめぐる税制は、令和4年度と令和5年度の改正で、それぞれ対象や使い方に制限が加わってきました。当社が使った少額減価償却資産の枠は今のところ残っていますが、「次の改正でこの枠も対象になる」可能性が消えたわけではありません。
だからここは、損得ではなく方針の問題になります。制度が変わるリスクを織り込んで今期の利益を圧縮したいのか、それとも制度変更の余地がある手段はそもそも使いたくないのか。後者の考え方を持つ会社には、この商品に限らず、税制の一点に依存する対策は向きません。過去の改正の詳細は、マイニングマシン節税はなぜまだ使えるのかで追っています。
当社が利益の出なかった期に買わなかった理由
ここまでの条件のうち、当社自身が実際に「買わない」と判断した場面があります。
3年のライセンス期間が満了したあと、当社は同じ商品を再購入していません。理由は商品への不満ではなく、翌期の状況です。翌期は決算で不動産を購入したことで利益がほぼ相殺され、決算対策を必要とするほどの黒字が残りませんでした。圧縮すべき利益がない期に節税商品を買っても、現金が出ていくだけです。だから見送りました。
当社にとってこの商品は、利益が出た期の選択肢の1つであって、毎期続ける固定費ではありません。今後また十分な黒字が出る期が来れば、再購入する意向はあります。
販売代理店やマイニング投資を勧めるサイトは、構造的にこの「買わない方がいい」を書きにくいはずです。買ってもらうことが収益になるからです。3年運用したうえで、合わない期には当社自身も買わなかった。この事実こそ、当社が実例を公開する意味だと考えています。
それでも向いていると判断できた場合は
ここまで5つの条件を挙げましたが、裏を返せば、いずれにも当てはまらない会社にとっては選択肢になり得ます。
具体的には、今期にはっきり圧縮したい利益があり、受取額が価格変動で振れることを決算対策に伴う副次的なリターンとして割り切れて、回収が数年に分散することも、コインを円に換える実務も許容できる会社です。そうした会社にとって、10万円未満の一括損金という入り口のわかりやすさは、他の決算対策商品と比べても扱いやすい部類に入ります。
当社が3年でどれだけ受け取り、どう処理したかの実数は3年間の全記録にすべて出しています。判断の前に実例を確認したい場合はそちらを、Web3 Maker以外の手段とも並べて比べたい場合は決算対策商品の比較を参照してください。そのうえで向いていると判断できたなら、稼働期間や受取コインの選択肢といった最新の仕様と価格は、公式サイトで確認するのが確実です。
まとめ
整理すると、次のいずれかに当てはまる会社は、この商品を慎重に考えた方がいい部類です。
- 今期に圧縮すべき利益が出ていない
- 受取額が暗号資産の価格で振れることを許容できない
- 損金は初年度一括なのに回収は数年に分散する、その時間差が資金計画に合わない
- コインを円に換えるウォレットや取引所の実務を回せない
- 将来また税制改正で使えなくなるリスクを受け入れられない
逆に、これらのいずれにも当てはまらない会社にとっては、検討する価値のある選択肢です。最初の分かれ目は、今期に圧縮すべき利益があるかどうかに尽きます。そのうえで、価格変動と実務の手間をどこまで許容できるかを、自社の状況に当てて判断してください。