税制解説

経営強化税制の対象設備と除外品目 — マイニングが外れた理由

中小企業経営強化税制は、対象になる設備の種類と金額、そして対象から外れる資産や業種が細かく決められています。設備投資や決算対策商品の説明を前に「自社のこの設備は対象になるのか」を確かめたい中小企業・マイクロ法人に向けて、対象設備の4類型と最低取得価額、中古資産・貸付け資産・暗号資産マイニング業などの除外品目を、国税庁と中小企業庁の一次資料にもとづいて整理します。即時償却や特別償却という制度の仕組み自体は即時償却と一括償却・特別償却の違いで扱っており、この記事では対象と除外の中身に絞ってまとめます。

経営強化税制の対象設備と最低取得価額

中小企業経営強化税制(租税特別措置法第42条の12の4)は、青色申告の中小企業者等が経営力向上計画の認定を受けたうえで、指定事業に使う対象設備を取得した場合に、取得価額の全額の即時償却か、取得価額の一定割合の税額控除を選べる制度です。この即時償却は、税額そのものを減らす節税ではなく、損金にする時期を前倒しする課税繰延にあたります。対象になるかどうかは、設備が4つの類型のいずれかに当てはまるか、そして金額が最低取得価額に届くか、の2点で決まります。

A類型からE類型までの違い

対象設備は次の4類型に整理されています。

従来はデジタル化設備を対象とするC類型がありましたが、令和7年度税制改正により2025年4月1日以後は廃止され、現在はA・B・D・Eの4類型となっています。どの類型でも取得前に経営力向上計画の認定が必要で、取得した期に処理できる少額資産の制度との大きな違いです。

設備の種類ごとの最低取得価額

類型に当てはまっても、設備の取得価額が一定額に届かなければ対象になりません。金額の目安は次のとおりです。

設備の種類 最低取得価額
機械装置 160万円以上
工具・器具備品 30万円以上(令和8年4月1日以後の取得は40万円以上)
建物附属設備 60万円以上
建物及びその附属設備 1,000万円以上(E類型)
ソフトウェア 70万円以上

工具・器具備品の最低取得価額は、令和8年度税制改正で引き上げられました。令和8年3月31日以前に取得した分は30万円以上、令和8年4月1日以後に取得した分は40万円以上が基準で、機械装置160万円以上などその他の金額は据え置かれています。会計ソフトや事務所の解説記事には、この引き上げや後述の適用期限延長が未反映のものもあるため、金額と期限は最新の一次資料で確かめるのが安全です。

対象から外れる資産 中古品と貸付け資産

金額と類型の条件を満たしても、資産の性質によって対象から外れるものがあります。代表的なのが中古品と貸付け用の資産です。

経営強化税制の対象は新品の特定経営力向上設備等に限られ、中古で取得した機械や器具は、金額が基準に届いても即時償却や税額控除の対象になりません(中小企業庁のQ&A集による)。

もう1つが、他者に貸し付けるために取得した資産です。国税庁タックスアンサーNo.5434には「貸付けの用に供する資産は、特定経営力向上設備等には該当しません」と記されています。これは、経営強化税制が対象を生産等設備、つまりその法人が生産・販売・役務提供といった収益を稼ぐ活動に直接使う設備に限っていることから来る要件です。

この貸付け除外は、少額減価償却資産など3つの制度が令和4年度税制改正で貸付け資産を除外した話(マイニングマシン節税はなぜまだ使えるのかで詳述)とは根拠が異なります。令和4年度改正は3つの制度に後から除外規定を加えたものですが、経営強化税制の貸付け除外は制度が対象とする範囲そのものに組み込まれた要件です。同じ「貸付けは対象外」でも拠って立つ条文が別である点は、押さえておきたいところです。

対象から外れる業種 コインランドリー業と暗号資産マイニング業

資産の性質だけでなく、設備を使う業種によっても対象から外れる場合があります。

コインランドリー業や暗号資産マイニング業は、業種としては経営強化税制の指定事業に含まれ得ます。そのうえで令和5年度税制改正により、これらの用に供する資産のうち「その業種が主要な事業でない」かつ「管理のおおむね全部を他の者に委託する」の両方に当てはまるものが、対象から除外されました(国税庁タックスアンサーNo.5434、中小企業庁のQ&A集による)。

ここで押さえておきたいのは、全面的な禁止ではなく2つの条件の組み合わせ(AND条件)である点です。マイニングやコインランドリーが自社の主要な事業であれば除外されず、また運用や管理を自社で担っていれば除外されません。除外に当たるのは、本業ではない事業を、運用も管理も丸ごと外部に委託して損金だけを受け取る形です。

この改正の経緯はマイニングマシン節税はなぜまだ使えるのかで詳しく追っています。決算対策商品として案内されるマイニング設備が対象になるかどうかは、この主要事業性と委託の度合いで判断が分かれます。

その他の対象外になるケース

上記のほかにも、設備の使い方や業種によって対象外になるものがあります。

太陽光発電を検討する際は、自家消費と売電の割合を事前に確認しておく必要があります。

適用期限は令和9年3月31日

経営強化税制の適用期限は令和9年3月31日(2027年3月31日)で、令和7年度税制改正により令和7年3月31日から2年延長されました。中小企業庁の制度ページ、国税庁タックスアンサーNo.5434、中小企業庁のQ&A集のいずれも、この令和9年3月31日で一致しています。

この期限までに設備を取得すればよいというだけでなく、取得の前に経営力向上計画の認定を受けておく必要があります。認定は申請から1か月以内が目途とされていますが、その前に経営力向上計画そのものを作る時間も要るため、決算日の直前に思い立って間に合わせられる制度ではありません。少額資産の制度のように駆け込みで使える制度ではない点は、即時償却を扱った記事でも触れたとおりです。

当社の場合 対象規模の設備投資が生じていない

当社(株式会社87Technology)は、ソフトウェア開発と不動産賃貸を営むマイクロ法人です。この経営強化税制は使っていません。

理由は、対象設備の価格帯に届く設備投資が現状で生じていないためです。当社が決算対策で取得してきたのは1台10万円未満のマイニングマシンやiPhoneなどで、経営強化税制が対象とする機械装置160万円以上といった金額には届きません。

当社が対象外なのは規模によるものであって、制度を避けたからでも、中古・貸付け・マイニング除外のような制度上の理由で弾かれているからでもありません。たとえば当社は暗号資産のマイニングマシンを運用していますが、これは1台10万円未満の少額減価償却資産(法人税法施行令第133条)として損金算入するもので、そもそも経営強化税制を使う場面がありません。経営強化税制のマイニング除外は、高額設備を計画認定で即時償却する経路に関わる話で、少額資産で処理する当社の型とは土台が別です(この切り分けはマイニングマシン節税はなぜまだ使えるのかで整理しています)。

当社が実際に使った少額資産の制度(10万円未満の少額減価償却資産と、30万円未満の中小企業者等の特例)の中身は、少額減価償却資産の特例 完全ガイドにまとめています。

まとめ

中小企業経営強化税制の対象と除外を整理すると、次のようになります。

設備投資や決算対策商品が経営強化税制の対象になるかは、金額・類型・新品かどうか・業種・貸付けの有無を順に確認します。制度の即時償却や税額控除がそもそも節税なのか課税繰延なのかという土台は即時償却と一括償却・特別償却の違いに、最低取得価額に届かない場合の代替となる少額資産の制度は少額減価償却資産の特例 完全ガイドに整理しています。経営強化税制を実際に使う決算対策商品(トランクルーム・コンテナ投資など)の位置づけは、決算対策商品の横比較で他の商品と並べて確認できます。